第73回句会
| 吊り下げし鮟鱇終電車にて思ふ | 海老車 |
| ストーブで火傷せぬかと猫撫ぜる | 具留斗 |
| 鍋底に白菜透ける欠伸出る | 螺子丸 |
| 傘さして時雨に濡る手粟つかめ | 具留斗 |
| 靴下の穴を見つけた冬の朝 | 歌葉 |
| 天の川首を傾げるおっとせい | 虹鱒 |
| 師走は夜しばれしばれて空眺む | くらら |
| 葉牡丹もそりゃ垢抜けたしABC | 竹ノ子 |
| 十二月月が食われて年暮れる | 具留斗 |
| ああなってオギャーッとなって八つ手の実 | くらら |
| 焼鳥のビデオテープと宮小路 | 翠柑 |
| 気がつけば指先ばかり年の暮 | おにかます |
| キミと蜜柑絶対糖度シンクロ中 | 苦椒醤 |
| 悲しみはホットカーペットへ逃げる | 道草 |
| 昔来た網代では氷魚が獲れたとは | 具留斗 |
| せがまれて憎らしいとも鯊の口 | 道草 |
| 枯野にも呼べば応える蟲があるかも | 具留斗 |
| 外套に他所の顔して手を通す | 螺子丸 |
| 亡霊の如し銀杏落葉かな | 螺子丸 |
| 冬枯に歩をはやめても追いつけず | まね |
| 熱燗にはやる気持ちを溶かしおり | 海老車 |
| 賀状書く去年の今と違う今 | 地山 |
| おでん皿下げられるとき寂しかり | 道草 |
| 雪女カレのうなじの黒子押す | 苦椒醤 |
| 父の笑みフリースの色ビリジアン | まね |
| ベンチコートの君にティッシュを貰へば帰路 | 道草 |
| 十二月星が音たてやってくる | 翠柑 |
| 悴みを遂に武器としこの女 | 竹ノ子 |
| 初霜の芝に並びし芦毛馬 | 川獺 |
| 文書きて投函せずに冬眠す | 頬白 |
| 窓の外短日明かり点けぬまま | 地山 |
| 冬枯のお湯からぽかり島ふたつ | まね |
| 月食や脳裏に焦がしシンメトリー | くらら |
| 昼起きて降るや降らぬや知らぬ雪 | 地山 |
| あたたかな部屋にソプラノ風は外 | まね |
| 極月や股ぐらから呼びかけている | 新葵 |
| 紅に白不協和音にすきま風 | くらら |
| 拍子木におかめほころぶ熊手かな | 川獺 |
| 湯豆腐の過ぎる喉元指で追う | 川獺 |
| 冴えてなお皆既月食のあわい | 虹鱒 |
| ポインセチア、ハンドクリームぬったげる | 竹ノ子 |
| 夫帰らぬ青い煙の秋刀魚かな | 虹鱒 |
| ティンパニー叩く酔いどれ冬の星 | おにかます |
| 階段にソプラノ響く火事見舞 | 頬白 |
| 来ぬ人のねんねこ着ぶくれ家出する | 頬白 |
| 立ち止まる人なく聖樹我に似て | 海老車 |
| 噺家の言葉も尽きて秋深し | 虹鱒 |
| 湯たんぽや熱湯飲み干す十二月 | 歌葉 |
| 冬の夜近づいてくる宇宙 | 翠柑 |
| 待ちわびし二日目の大根じわり | 海老車 |
| 年の暮ポッケにしまう切符かな | くらら |
| いただいた大根かわく冷蔵庫 | 地山 |
| 嘘の風邪気づかう人の顔は見ず | 地山 |
| 暦売裸の女笑っている | 川獺 |
| 名も華もなし咲くことぞ美しき | 苦椒醤 |
| 水分はただひたすらにみかん山 | 翠柑 |
| まるで君封印されて香水瓶 | 苦椒醤 |
| 冬の星月の瞼に焼きつけて | 歌葉 |
| 冬の滝二匹の竜が飛び跳ねる | 頬白 |
| 旧友とまた来年の小晦日 | おにかます |
| ローエンドロー聞いておくれよ大根の葉 | 竹ノ子 |
| 陰りこそ魅せてなんぼかアルテミス | 苦椒醤 |
| 冬の海涙なんか出やしない | 翠柑 |
| 午前二時ひとりですする生姜酒 | 頬白 |
| 甘きみかんひとりごちては爪をたて | 海老車 |
| この額は年末賞与か年玉か | 川獺 |
| 東西線車体に冬の日貫通す | 道草 |
| カンナナ・・・否、カンパチと鮨屋にて親父 | 竹ノ子 |
| 片時雨フェンス一枚の国境 | 虹鱒 |
螺子丸さんと介介さんのお店、国立の音楽茶屋「奏」で句会をしました。