第二部 2009年の後半

おひさしぶりでございます。2009年はいよいよもって個人的に低迷していたのであれですが、皆さん元気でありましょうか。

それはそうと2010年代に入りましたね。年代が替わると歴史の1ページという感じが強くします。何十年も経てば「蒙昧の会はゼロ年代に産声を上げ・・・」などと言う日が来るのでしょうか。とりとめも無い空想ですが、まあそんな訳で良い具合に歳月を重ねていきたいものです。

とまあキリが良いので筆を執った次第ですが、前から蒙昧の会には議論が足りないなあ、などと手前勝手に構想しており、本年からは「お節介モード」でちょっと未来に向かってコツコツ手を焼いて発火していく所存であります。

ということで我々の俳句がより皆々の心に残るきっかけとなりますよう願いまして、久々の更新。


前々々回の句会より(2009年11月29日、駒沢オリンピック公園)

この日は紅葉目当てに駒沢公園を吟行しました。

マフラーにすべてを巻きつけて蜥蜴(とかげ)  P  9点
補助輪を外す時が来た暮の秋  おにかます  5点
秋の日にだいだいのお召し物みかん  竹ノ子  5点
散紅葉吸い込む息も赤く燃え  翠柑  5点
倒れても起きても丸きジャケツの子  道草  5点
丼の底一面の紅葉かな  おにかます  5点

高得点句はこんな感じ。特選のPの句以外は横並びに。
やはり選ばれる句というのはそれなりに理由があると思います。

そして、この日の句会で印象深かったのは特選のPの句を選んだ人が講評で口々に「よくわからないけど」と言っていたことです。

「よくわからないけど良い」というのは句会ではよくあることです。
でも、これってどういうことなんでしょうね。

私は基本的には俳句は「よくわからない」と思うほど様々な要素が微妙なバランスで成り立っているから面白いと思っているので、この「よくわからない」は非常に大事な要素としていつも気にしています。

ただ、私にとって「よくわからない」というのは「=保留」ということだと思っています。いつかはよくわかりたいのです。

つまり、よくわからない良さをよくわかっていくことが俳句の道なのではないかな。と、私は最近思い至りました。

わき道で熱くなりましたが、それではPの句に関して、

マフラーにすべてを巻きつけて蜥蜴(とかげ)  P

この句は、意味的には確かによくわかりません。ただ私の結論としては、「女の執念」を詠んだ句だと思いました。かわいく見せるためには何をも恐れないグロテスクな女性心理を蜥蜴に託した句かなと。

作者自身もよくわからないと言っていましたが、この句が高得点だった理由として「蜥蜴」で終わる句のリズムの良さは考えられます。受け入れられるリズムを巧まずして発揮するのって才能だと思うなあ。(音×2)(詩×1)

補助輪を外す時が来た暮の秋  おにかます

子どもの情景が浮かぶ句ですね。上手くさらりと詠んでいる向きもあり、裏を返すと「外す時が来た」の中七の口語調の字余りが上手いのか上手くないのか判断が難しい。暮の秋の効きは良いと思いました。(俳×1)

秋の日にだいだいのお召し物みかん  竹ノ子

かわいいといえばかわいいわかりやすい句です。「だいだい」と「みかん」を平仮名にして雰囲気を出しています。特選のPの句と同様に、上五の後を一息に読み下すリズムです。流行なのか?しばらく見守りたいところ。(音×1)

散紅葉吸い込む息も赤く燃え  翠柑

端整なたたずまいの句で、綺麗な句だと思います。上手く感覚的なことを詠んでいるのですが、大人しい印象を受けるのは綺麗過ぎて類想感があるからかもしれません。私はこういう句の評価が一番難しいと思っています。(俳×2)

丼の底一面の紅葉かな  おにかます

丼と紅葉の取り合わせが日本的で小粋な句。丼の底一面の紅葉というのが具体的にイメージすると何通りもあるようで、はっきりしないとも言えるし、はっきりしないところが良いとも言える。(俳×2)

この日、私が天で取った句は、句会初参加の風の子の句でした。

秋茜まだみぬ都会(まち)も赤いかな  風の子

唱歌「赤とんぼ」の「夕焼け小焼けの赤とんぼ」は日本国民が共有している最もベタな郷愁のイメージだと思うのだけど、この句はそれを郷愁以前の都会への憧れの側から詠んでいる。なんか目から鱗が落ちる気がする。このようなちっぽけでリアルな実感によって虚構は支えられてはいまいか。(俳×1)(実×1)(道×1)

地で取ったひろしの句は、

赤信号わざと吸い込む冬の朝  ひろし

冬の朝の信号待ちで、深く息を吸い込んで身をひきしめる爽やかな一コマの描写。飾らず素直で素晴らしいと思った。これぐらいのサイズのことをこれぐらいの省略を利かせてこれぐらい上手く詠めたら、自分だったら自信を持つなあ。(俳×1)(実×1)(道×1)


前々回の句会より(2009年12月20日、荻窪席題「賀状書く、プ」)

2009年最後の句会は荻窪で席題でした。

不細工な脳天ぷかり柚子湯かな  翠柑  9点
冬空の角欲しくなる丸眼鏡  虹鱒  9点
日記買ふ気球に乗る日をつけてみる  翠柑  6点

高得点上位はこちらの三句でした。この後は4点句がたくさんありました。

不細工な脳天ぷかり柚子湯かな  翠柑

柚子を不細工な脳天と見立てたのが上手いと思います。しかし私は「ぷかり」の擬態語があまりにハマリ過ぎて、かわいい方向にイメージを固定し過ぎてしまったのではないかと危惧しました。オノマトペって色が付き過ぎることが多いので注意が必要かも。(音×1)(俳×1)(詩×1)(実×1)(惜×1)

冬空の角欲しくなる丸眼鏡  虹鱒

よく読まないと意味が取りづらい句ですが、句会で私は天で取りました。眼鏡を通して見るってところの感じが出ていて面白い句です。多分フレームの外はぼやけているのでしょう。冬との相性も良い。(詩×2)(俳×1)(道×1)

日記買ふ気球に乗る日をつけてみる  翠柑

独創的です。小さくて壮大なことを詠んでいるのがドラマチック。これは俳句となるのにぴったりのサイズだと思います。惜しいと思うのは散文的なため、最後がつぶやきのように切れてしまうところ。(詩×1)(実×1)(惜×1)

その他の気になった句は、

冴ゆる空星座のひとつひとつにへそ  翠柑

この日は翠柑の句が点を集めていました。どの句もイメージに独創性があり納得でした。この句も奇をてらわずに上手く言い得ていると思います。空と星座が付きすぎてるところがあるので、上五をもうひとふんばりすると、独創性がもっと活きてくるかもしれません。(詩×2)(惜×1)(道×1)

キリエエレイソンと賀状書けば君が  風の子

こういう少し凝った俳句は私は大賛成です。発想もとても面白いと思った。ただ人目を引く分、辛い評価を受けやすいので推敲が重要。僭越ながら少し並べ替えて「賀状書く君はキリエエレイソンと」や「君に書く賀状やキリエエレイソン」などとする線もあり、面白い。(詩×3)(惜×1)

冬の暮高層ビルに混じりけり  ひろし

コンクリートジャングルとかなんか古臭い言葉かもしれないが、高層ビルは都会に生きる我々にとってはもはや自然だ。なのでこういう句は凄く良くわかる。寒々とひしめき合っている高層ビルが冬の暮ってことなのだ。(詩×2)(俳×1)(実×1)(道×1)


とまあこんな感じで。ごちゃごちゃとやっていくぞ。