第69回句会
| 秋の蚊や血吸い終わり地に落ちて | 常盤 |
| 文(ふみ)読みて秋の蚊殺してふて寝する | 頬白 |
| 白無垢やお隣だあれ秋暑し | くらら |
| 階段に腰かけ掴むほうき星 | 頬白 |
| 沢山の桃を冷蔵庫に閉づる | 道草 |
| 秋の蚊に祖母を思ひて腕組す | 海老車 |
| 母と子が並べたかぼちゃむつまじく | 亀吉 |
| 帽子ぬぎ木陰すずしや秋の風 | 亀吉 |
| 長寿梨泣き顔晴れて楊枝さす | 頬白 |
| せみを背に染まり始めるもみじかな | 亀吉 |
| 秋の蚊をくるぶしに置き夕陽の中 | 道草 |
| 原爆忌わたしのイギリスが燃ゆる | 虹鱒 |
| 結論はまた先送りみみず鳴く | 新葵 |
| 死よ蝉たちよ分けよ私を人間を | 虹鱒 |
| 涼しくは越せぬ八月十五日 | 道草 |
| 蝉たちのようこそ響く墓参り | くらら |
| 秋の暮アイスクリームやめよかな | 常盤 |
| テレビを消し電気を消して虫の声 | 道草 |
| 連戦連敗秋の蚊にまでも | 新葵 |
| 振り向けど残像かすむ花畑 | 頬白 |
| 秋の蚊のごとく人肌求めたり | 虹鱒 |
| 焦がされて諸々忘るる残暑かな | くらら |
| 炎昼や一馬力にも満たぬ俺 | 虹鱒 |
| 初嵐子らの浮かれを一蹴す | 海老車 |
| 生姜焼き生姜多めのこの季節 | 常盤 |
| 秋立つや思い思いの肌の色 | 虹鱒 |
| 天(そら)仰ぎシート座す鰡(ぼら)終電車 | 海老車 |
| なげいても残り三日だ夏休み | 亀吉 |
| 言い訳を夜風に詫びて温め酒 | 海老車 |
| 四畳半鰯に目礼夕餉かな | 海老車 |
| 秋の蚊に老いた親の姿見え | 亀吉 |
| 牡蠣を描き色に檸檬を添へし画家 | 道草 |
| 息止めて吸い込まれてく電照菊 | 頬白 |
| 稲妻や寡黙な人もしゃべりおり | 常盤 |
| 気がつけば釣瓶落しの音高し | 常盤 |
題「秋の蚊」