第67回句会
鐘鳴らし熊の背を見て逃げ戻る | 蚕豆 |
金魚の目かもめ〜るの里ごころ | 歌の葉 |
ベランダの日陰に低く雪の下 | 白楓 |
夏服の若者俯き猫背なるかも | 介介 |
推敲を忘れし頃の山帰来 | くらら |
登山道命在りしことを知る | 竹の子 |
なめくじや一ミリずつ歩み寄り | 竹の子 |
悩むのは稚鮎(ちあゆ)を揚げて食べてから | 竹の子 |
妻出でて白湯呑んでいる梅雨の入 | 虹鱒 |
焼きトマトたまごでとじて召しあがれ | 頬白 |
振り向けば赤き紫陽花ばかりの夜 | 道草 |
汚れた口(くち)ラベンダーソフト笑う君 | 頬白 |
腹痛や汗血たぎる狂奏曲 | 歌葉 |
方言に力みなぎる暑さかな | 常盤 |
アパパネに見惚れた頃の青葉かな | 常盤 |
夏至の日のバー一人飲む納得 | 虹鱒 |
陽に当たることのなきサングラスたち | おにかます |
シャカシャカと奏でる快音髪洗う | 頬白 |
お日様にしゃんと敬礼燕子花 | くらら |
クールビスもシャワー浴びたし正午前 | まみねこ |
ごきげんよう我が領空の小さき蛾 | 道草 |
弟が送金してくれた麦茶飲む | 歌葉 |
真っ青なシャツに匿う黄金虫 | おにかます |
アスファルト鮮やかに咲くパラソルかな | まみねこ |
メチュ(ビール)チュセヨ、リズムチュセヨ、123 | 竹の子 |
三杯を境に麦酒のごとき何? | 道草 |
夏の夜あなたはなにもわるくない | 介介 |
奏(そう)弾み楽し懐し同窓会 | まみねこ |
スタジオで奏でておるは雷様(ライサマ)だ | 常盤 |
破れ傘見送る背中始まる朝 | 頬白 |
嬌声も喰い尽くさんと燕の子 | 螺子丸 |
隣人の声睦まじく汗拭う | おにかます |
奏句会雨のかおりは地下にまで | 白楓 |
昼の間に金魚が奏の字に泳ぐ | 螺子丸 |
桜桃や双子も踊る陽の祭り | 白楓 |
奏春賦頬なぜる風いつもの店へ | 介介 |
子の口は赤く尖りて人も燕も | 螺子丸 |
枇杷をむく義母と義祖母とあいづちと | 白楓 |
草いきれ奏でる波は真夜中に | 新葵 |
網戸経た向こうは夏になりにけり | 螺子丸 |
鳴き声の美しきかな初夏の蜩 | 蚕豆 |
哀しみは奏でるものよさくらんぼ | 虹鱒 |
まぶしい陽摘む楽しみや青トマト | まみねこ |
雨粒が町の輪郭奏でおり | おにかます |
照れ笑い鏡越しに目合うサングラス顔 | まみねこ |
さやえんどう茹ですぎている他人の妻 | 虹鱒 |
万緑の中を切り裂くポニーテール | 螺子丸 |
木立を縫いサマードレスの幼き母 | 道草 |
休憩は木耳(きくらげ)みたいに寝りおり | 常盤 |
生焼けの一本道を夏の終わりに | 介介 |
夏の風部屋に結びて寝に入る | 常盤 |
おつむからきのこ伸びるの梅雨かな | くらら |
水芭蕉人も好むが熊も好む | 蚕豆 |
来る来ない何輪ちぎるマーガレット | 頬白 |
皿割れてさらわれている梅雨曇 | 虹鱒 |
梅雨曇りカーテンを開け一角獣 | 道草 |
入間愛固く誓いし暑気中(あた)り | おにかます |
風も無き丑三つ畳に蜘蛛跳ねる | 新葵 |
金玉に似たさくらんぼ集めおり | 白楓 |
本好きの香典談義や桜桃忌 | 歌葉 |
ダリヤ咲くいじめられっ子見つめてる | 新葵 |
なめくじの殻がなくて泣いた路 | 歌葉 |
ひそやかな記念日虹に祝われる | 新葵 |
熱帯夜薫る発酵した孤独 | 介介 |
床入りや香水ひとさじププッピドゥ | 竹の子 |
熊を見て無傷であるから尾瀬また行く | 土竜 |