第60回句会
落葉を己が汚れと掃き集む | 新津 |
無意識に古き落葉を踏む人よ | 道草 |
銀杏散るよからからからから黄色い脳 | 虹鱒 |
上野山枯れてめいめいの休日 | 新葵 |
去るものは去りし群舞のゆりかもめ | 道草 |
雨を舐め風を舐めて吊るし柿 | 螺子丸 |
秋気澄むちと記念碑に腰をかけ | おにかます |
頃合をみて席を立つ暮早し | 常盤 |
本日晴天みのむしいじめ止めんとす | 竹の子 |
歳末の電飾わきのワンカップ | 常盤 |
パイプの火消えたままかな枯蓮池 | 翠柑 |
縄張りを横取られんと息白し | 常盤 |
小春日を横長に見る破蓮 | くらら |
枯れた葉が静かに隠す音楽堂 | 芭蕉布 |
触れられし腕から女秋の蝶 | 竹の子 |
紅葉と清水坂に千手観音 | 芭蕉布 |
枝残る染井吉野のオレンジ葉 | 真琴 |
短日も竹の箒とラジオかな | 常盤 |
落ちる葉のスローモーション息止まる | くらら |
干し柿や若い乳房を相手にもせず | 竹の子 |
枯蓮は全て斜陽に顔を向く | 道草 |
落ち葉ふむ街鳩ほとほとぽぽぽ | 虹鱒 |
都鳥空深くより降り立ちぬ | 新葵 |
冬の暮子規球場の音鈍く | 翠柑 |
敗荷やおびんずるさまの浄土 | 虹鱒 |
空高く水面を抱く破れ蓮よ | 杏 |
山茶花やオクラホマミキサーで踊り疲れて | 螺子丸 |
見上げれば冬見つけたりオリオン座 | 椿 |
破れ蓮の茎よまだまだ天を向け | 常盤 |
栗はじけ女のからだは変化せり | 竹の子 |
鈍色の空気がおりる上野不忍 | 芭蕉布 |
くるくると放るキャッチユリカモメ | 芭蕉布 |
江戸菊やまつ毛くるりん肩上げて | くらら |
忍枯ること阻むなり蓮の池 | 常盤 |
冬木立ち蜜柑一個の惑星香る | 杏 |
年の瀬近し猫さえも急ぎ足 | 新葵 |
さんまのはらわた舐める夫の影延びて | 螺子丸 |
不忍の蓮うなだれて暮の秋 | おにかます |
薄紅葉下った先で待ってます | おにかます |
紅笑う本気になるなる銀杏の黄 | くらら |
冬の空色がたくさん落ちてくる | 翠柑 |
初冬日暮るるうち恋いし鍋恋いし | 新葵 |
木枯らし吹いて左手が右のぽっけに居候 | 椿 |
いちにのさん号令かければさく山茶花 | 螺子丸 |
たすき模(も)す石のゴールの駅伝碑 | 真琴 |
破蓮や一年一計全うす | 虹鱒 |
線香の煙染みこむ破れ蓮や | 杏 |
辯天堂河豚も眼鏡も包丁も | おにかます |
もしや、キスも知らないでいる青蜜柑 | 竹の子 |
破れ蓮と潰れた缶ビール旅立つ君よ | 杏 |
一年の全てを枯蓮の穴に詰め | 翠柑 |
札束と師走に向かう屋台かな | 虹鱒 |
枯蓮やここに何塚建てようか | 新葵 |
蓮の葉が守る不忍黒い水底 | 芭蕉布 |
びんずるの口で砕けし秋思かな | 真琴 |
そぞろ寒おびんずる様どこ撫でる | おにまかす |
枯はちすおでん屋の光更けるかな | 翠柑 |
シロナガスクジラのごとく空を睨(ね)む | 道草 |
ランプ笠作りたし葉や破れ蓮 | 真琴 |
鴨よ鴨鴨は離れてしまひけり | 道草 |
金属音鳴らすあの鳥冬の池 | くらら |
破れ蓮や赤子のように落葉抱き | 杏 |
上野・不忍池で吟行しました。